会いたくなったらすぐ行くよ
一日忙しい仕事が終わり、家に帰る。そして愛しいあの人に電話をかけるのは、もう日課のようになっている。
「今日は何のお仕事だったの?」
「レコーディングと写真撮影に、ドラマの撮影・・・・・もうダメ、死ぬ」
「あはは・・・・お疲れ様。でも、疲れてるんなら早く寝た方がいいよ。毎日電話かけなくても、私は平気だし・・・・・」
「ダメ。俺、一日に一回おだんごの声聞かないと眠れねーもん」
拗ねたように星野が言うと、うさぎがぼん、と真っ赤になり、照れ隠しに何言ってんのよ、と叫ぶ。
そんなやりとりも楽しく、星野はクス、と笑う。
「でも、マジだぜ。なんか・・・・・お前の声聞いてると、安心する」
「・・・・・星野・・・・・」
「あーあ・・・・・会いてーなぁ。仕事だなんだって学校にも行けなくなって、どれくらい経ったっけ。ん〜・・・・・
2週間ってトコ?」
「・・・・そうだよーだ。あんまりほっとくと、浮気しちゃうから」
「はは」
「何笑ってんのよ。いいの?浮気しても」
「ダメに決まってんだろ。でも、大丈夫」
「何が?」
「おだんご、そんな器用なことできねーし、第一・・・・・」
「・・・・第一?」
「俺のこと、好きだからそんなこと出来ない」
「っ!な、何言ってんのよ、馬鹿っ!自意識過剰すぎ!!」
「そーか?でも、ホントだろ?」
「うっ・・・・・」
言葉に詰まって、うさぎはもう何も言えない。真っ赤になっているであろううさぎを想像して、星野は苦笑する。
「・・・・・でも、ホント。会いたいな」
「あ・・・・・」
「もうすぐ、休み取れるからさ。そしたらいっぱいデートしような」
「・・・・・あ・・・・・う、うん」
「・・・・と、もうこんな時間か。そろそろ電話変わらないと、夜天が怒るな」
「夜天くん?」
「そうそう。電話するのも大変なんだぜ。夜天の奴も愛野に電話した言って言うから、毎日毎日どっちが先に電話する
かでじゃんけん大会。でも、夜天に負けた日は最悪なんだよな。あいつ、ホンット愛野にかける電話は長いから・・・・・・
いてっ!!」
「せ、星野?」
「いや・・・・平気平気。おい夜天!何も時計投げつけることねーだろ!」
『うるさい、馬鹿星野!余計なこと喋るな!!』
電話の向こうから夜天の声が聞こえる。ぎゃあぎゃあ口げんかをする声がして、うさぎは思わずぷっと噴出して笑った。
「あ・・・・わ、悪い悪い。でさ、今度の日曜・・・・・」
「ね、星野」
「ん?」
「もう、家にいるんだよね?」
「ああ・・・・・いるけど、それが?」
「今からそっち行ってもいい?」
「・・・・・・は!?」
うさぎの言葉に驚いて、星野は思わず大声を出す。
「だってやっぱり会いたいし・・・・明日は祝日でお休みだから、夜遅くなっても平気だし。ね、ダメ?」
「い、いや、まさか・・・・・ダメってことはねーけど・・・・・」
「ホント?じゃあ、今から行くねっ」
「ちょ、ちょっと待った、おだんご!」
星野の声もむなしく、つーつーと電話が切れた音が耳に届く。星野は呆然となって受話器を握り締める。
すると、後ろから夜天がばっと受話器を取った。
「ちょっと星野っ、電話終わったんなら早く貸してよね」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・星野?」
何の反応も返さない星野に、夜天は首を傾げる。そしてパタパタと顔の前で手を振ってみる。
それでも反応を返さない星野に、夜天は頬をポリポリとかくと、巻き込まれないようにと一人作詞をしていた
大気に声をかける。
「大気ー、星野が馬鹿になった」
「元からでしょう」
ピン、ポーン・・・
大気が作詞中、夜天が電話中に、インターホンが鳴った。夜天が出るわけがないので大気はやれやれと重い
体を上げる。
すると、もう先に星野が素早く玄関に行く姿が見えた。何事だと思ったが、玄関を開けて見えたその姿を確認して、
なるほどと納得した。
「えへー、来ちゃった」
「お・・・・おぉ、いらっしゃい」
「あのね、今日ちょうどまこちゃんがクッキー焼いてくれてたの。お腹空いた時にでも食べてね。まこちゃんの
クッキー、最高だから!」
「あ・・・・う、うん。サンキュ・・・・」
「?どうかした?星野」
「あ、い、いや、なんでもない。それよりホラ、上がれよ。寒いだろ?」
「うん。お邪魔しまーす」
うさぎを中に招き入れ、自分の部屋へと案内する。それをこっそりと見ていた大気と夜天は、少し呆れたような顔を
しては後ため息をついた。
「星野って、ヘタレだからなぁ・・・・・大丈夫かな」
『え、何のこと?』
「ううん、なんでもないよ」
受話器の向こうで、美奈子が不思議そうな声を上げるが、夜天は誤魔化して別の話題を持っていった。
2
「うわー、相変わらずシンプルな部屋だね。もっとなんか置いたら?」
「なんかって?」
「・・・・漫画とか」
「興味ないし、見る暇ないからな」
「じゃ、今度面白いの貸してあげる」
にこ、と笑うとベッドにすとんっと座った。星野は、それだけでドキッとしてしまう自分を情けなく思う。
「あ、遅くに押しかけてごめんね。もし眠いんなら寝ていいからね」
「・・・・いや、もうばっちり覚めた」
「そうなの?」
きょとん、とした顔で部屋の壁に立てかけてあるギターを弄る。
「でも、ホントに会うの久しぶりだね。あ、テレビの中なら見てたけどさ」
「・・・ああ、そうだな」
好きな女の子と夜に、自分の部屋で二人きり。しかも場所がベッドの上。こんなに美味しいシチュエーションはない。
しかし、当の相手はそんなこと全く気づいてないのだろうが。はあ、と一つため息をつく。
すると、腕にぴと、と手が触れてきて、星野はぎょっとした顔をする。
「あ、やっぱり」
「な、なんだよ」
「星野、すごい体硬いよ。動かしたらバキバキ言いそう。相当疲れ溜まってるね」
いえ、固いのは大半は貴方のせいだと思います。
流石にそんなこと言えなくて、そうか?と適当に促す。今はそれより、膝をベッドについて自分に近づいて触れている
彼女の方に意識が行く。
「ね、マッサージしてあげよっか。意外と上手いんだよーv」
えへへ、と笑うと、どっきん!と星野の胸が高鳴った。そしてぐっと手を握りこむと、四つんばいで近づいてくるうさぎの
手をぎゅっと握った。
「?せい・・・・・」
きょとんとしたうさぎの唇に、そっと口付けた。うさぎは目を見開いて驚いた顔をするが、星野のキスは嫌いじゃない。
すぐにそっと目を閉じてキスに応えた。
「ん・・・・・」
ぴく、とうさぎの体が震える。星野はうさぎから手を話して、今度は背中に回す。そして、首筋にそっと指を這わせながら
抱きしめると、うさぎの体が大きく震えた。
「星野・・・・・や、くすぐったい」
「・・・・・すぐ、気持ちよくなるから」
「・・・星野・・・?」
唇を離すと、抱きしめたままゆっくりとベッドに体を倒す。うさぎの体が柔らかなベッドに沈む。
「星野・・・?ちょ、ちょっと・・・・・・・」
「・・・・・・おだんご、無防備すぎ」
「え、なに・・・・・んんっ・・・!」
すぐに深く唇が重なる。今まで、キスは何度もした。しかし、こんなに深くて情熱的なキスはしたことがなかった。
「せいやっ・・・・なに・・・・・・」
唇を少し離すと、うさぎが声を漏らす。それを飲み込むように星野はまた口付けた。
うさぎが戸惑っていることは分かる。少し抵抗しているのも知っている。しかし、もう止まらなくてそのまま何度も唇を重ねた。
「せいや・・・・・んんっ」
「・・・・・・な?気持ちよくなってきたろ?」
ペろ、と唇を舐めながら聞くと、うさぎはかああっと顔を真っ赤にした。
「やだっ、星野・・・・」
「ダメ。俺もう止まんないから・・・・・」
「あ、やっ・・・・・」
「・・・・・・・・お前がほしい」
唇に口付けながら、囁く。うさぎは更に顔を赤くして、星野を見上げる。
こうして近くで見ると、本当に星野の顔は整っていると思った。
まっすぐな眉、影が落ちている長い睫毛、切れ長の澄んだ瞳、そして・・・・・綺麗な薄い赤の唇。
それが少し濡れているのが分かって、ドキッとする。
どんな姿をしても色っぽくて、頭がくらくらするほどにカッコいい。
「星野・・・・・あの、待っ・・・・・」
止めようとするが、首筋に唇を埋められて、声が止まる。びくっと震えて星野の服を握り締める。
「ん・・・・・せいやっ・・・・」
「おだんご・・・・」
少し低めの声。耳元で聞こえて、うさぎはびくっと震える。声さえも、自分を捕らえてしまうから。
「脱がして、いいか?」
「っ・・・!」
星野の方を見ると、とても情熱のこもった瞳が見える。美しさと色っぽさに、思わず鳥肌が立つ。
怖さからじゃない。怖くなんて、全然なかった。
うさぎは震える手を伸ばす。そして頬にかかった星野の黒い髪の毛を、そっと耳にかけた。そして体を少し起こすと、
自分から星野に口付ける。星野は驚いて目を丸くする。うさぎは唇を離すと、顔を真っ赤にしてきゅっと星野にしがみ
つく。
「・・・・・・いいよ・・・・・・・」
「っ・・・・・!」
どくん、と星野の胸が高鳴る。その瞬間、うさぎのブラウスのボタンに手をかけた。
「・・・・・悪い、止まんねえ」
「あっ・・・・」
いつの間にかボタンを全部外されていて、下着の中に手が入り込む。未だかつて、そんな所を他人に触れられたこと
なんてなくて、うさぎの体はますます硬く、そして震えていく。
勿論星野はそんなこと分かっていた。うさぎが不安に思っていることも、微かだが自分に怯えていることも。
でも、止まらない。吸い付くような白い肌に魅了されて、手が動く。
「うさぎ・・・・・」
初めて呼んだ、名前。なんだかくすぐったいが嬉しくて、うさぎは震えながらも星野にに抱きついた。
「あたしで・・・・・いいの?」
「・・・・馬鹿。お前じゃないとダメなんだよ」
お前以外に、こんな気持ちにならない。もう好きで好きで、好きすぎてどうにかなってしまいそうなのだ。
「・・・・・うさぎ」
「ん・・・・なに?」
「お前のこと・・・・」
「・・・・・星野?」
「・・・・・何でもない」
「なぁに?変な星野・・・・」
くすくすとうさぎが笑う。体の緊張は大分ほぐれたようだ。星野は笑うと、うさぎの瞼にそっとキスをする。
「俺さ・・・・お前のこと、すっげー好きだ」
「・・・・・うん。私も大好き。星野が・・・・・大好き」
ぎゅっと背に手を回すと、星野はゆっくりとうさぎに口付けた。
もっともっと、ほしい。
もっともっと、奥まで知りたい。
「・・・・お仕事で、疲れてるんじゃないの?」
「仕事の疲れと、これは別物」
「・・・・・もう、えっち」
「男だからな」
くすくすと笑いあうと、二人は静かに口付けた。
FIN
中途半端な所で終わってしまい、スイマセン;;
まだこれ以上はなんか書けません・・・・
もっと根性つけたら、裏かいてみたいと思います(笑)