夏色花火
「黒りん、これぐるぐるしたら動き辛いよ、きっと〜」
「動くなつってんだろがっっ!」
あれこれ言ってくるファイの帯を結びながら、黒鋼が怒鳴る
「ってか何で俺がお前の世話しなきゃなんねぇんだよ」
「だってぇ、『きもの』着たことないんだもん」
「『きもの』じゃなくて『ゆかた』ってんだよ・・・・おら、できたからもういいぞ動いて」
「ありがと黒様〜」
とふざけて引っ付くと「暑いときにやめろ」と黒鋼がファイの頭をはたいた
さて、浴衣を着ることになった経緯はというと・・・
「黒鋼さん、今夜みんなで花火しませんか?」
「突然だな」
剣術の稽古を終え、小狼が黒鋼に言う
「昼食の後、黒鋼さんが先に行ってしまってから姫とファイさんで話していたんです。夏なので花火でもしたいですね、と」
「あぁ、いいんじゃねぇか。夏の風物詩だ」
「あの・・・それで、本格的に浴衣を着てしようかと言う話になって・・・・」
ということで、今に至るのです
「きれい」
「ホント、きれいだねぇ〜。花火も、サクラちゃんの着物も〜」
「だぁから、『浴衣』だっつの!」
噛み付かんばかりの黒鋼の声に「黒りんは怒りんぼだなぁ〜」とファイが笑う
サクラと小狼はというと二人に挟まれてあたふたとしている
「あれ、これもう火が付かないですね。おかしいな」
「なくなっちゃったのかな、中」
サクラの花火に火を付けようとした小狼のライターのオイルがなく、付かなくなっていた
「貸してみろ」
と黒鋼が自分の持っていたライターで火を付ける
「ありがとうございます」
サクラが例を言った直後・・・
「黒ぴー僕のも付〜けて!」
「乗るな、寄るな、暑苦しいっっっ!!!」
しゃがんでいる黒鋼の背中にファイが寄り掛かり、自分の花火を後ろから差し出す
がたいがいいおかげで、なんとか黒鋼は持ち堪えた
眉間にしわを寄せて、面倒臭そうに花火に火を付けてやる
「夏色だね、花火の色は。黄色でお日様の色みたいに明るいね」
楽しそうにファイが笑う
黒鋼は花火を持っていない、空いた方の手でファイの髪に触れた
「お前の髪の色と同じだ」
きれいだ、と微かに笑った
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萌 詩亜様から頂きました、黒ファイ花火小説です。
もう、浴衣を着せてもらっているファイがかなり萌え!
本当に素敵な文才で、思わず鼻と口をおさえずにはいられません。
萌 詩亜様、ありがとうございました!