教えて、Teacher!
Lesson2:美術
最近僕には気になってるヒトがいる。
でも、誤解しないでほしい。別に好きとかそういうんじゃない。照れてるわけでもない。
僕が気になってる存在って言うのはね・・・・・・
「やってんせんせーいっ!!」
・・・・・・・・ホラきた。ちょうどいいから紹介しとこ。
このこが今僕が言っていた気になるヒト=僕の苦手なヒト。
十番中学に赴任してきて、早一ヶ月。たくさんの女の子に囲まれる毎日。
特にこの子、僕の教え子愛野美奈子に、僕夜天光はかなり参っちゃってるわけ。
「いきなり後ろから飛びついてこないでよ。今、絵を描いてる途中なんだから」
「ありゃ、そうだったの?ごめんなさい。あ、それ今度出展するの?」
「うん」
「ね、ね、どんな絵描くの?」
「オシエナイ」
んべ、と舌を出すと、愛野は不満そうに口を尖らせた。
「ねえ、先生」
「ん?」
鉛筆を動かしている最中、離しかけてくる。僕は大して気にもせず、手を動かしながら返事を返した。
「今度さ、あたしの絵を描いてくれない?」
「は?」
思いもかけない言葉で、思わず目を丸くして愛野の方に振り向く。すると愛野はにっこりと微笑んだ。
「あのねあのね、気になるの。夜天先生からあたしがどう見えてるのか」
「どうって・・・・」
「あたしね、夜天先生の絵が好きだよ。優しくって、見てたら心の中がふわふわするの。そんな優しい絵を描く夜天
先生が、もしあたしを描いてくれたらどんな風になるのかなぁって思って」
「・・・・・・・」
「だからね、暇な時でいいからね。あたしのこと描いてくれない?」
お願い、と手を合わせてくる。僕はじっとそれを見ると、ふいと絵の方に目を戻して、再び手を動かし始めた。
「・・・・・気が向いたらね」
「ホントッ!?」
愛野はぱあっと顔を明るくして嬉しそうな顔を見せた。
「気が向いたら、だからね。そんな期待・・・・・」
言葉は、最後まで続かなかった。愛野が突然僕の頬に、ちゅっと軽く唇を押し付けたから。
「なっ・・・!」
「えへへっ、ありがと!夜天先生、だーいすき!」
悪戯っぽく舌を出すと、愛野は部屋から出て行った。僕はというと、キスをされた頬を抑えてしばらく呆然となり、ぶる
ぶると首を横に振って再び絵の作成に取り組んだ。
しかし、手に余計な力が入って、鉛筆の心がポキッと折れる。
「・・・・・・・あの、馬鹿・・・・・・」
余計なことしてくれたおかげで、絵に集中できないじゃないか。
ああ、もう。認めたくない。こんなに赤くて熱い、自分の顔に。
掌で顔を覆うと、深くため息をつく。そして鉛筆を机の上に置いて書きかけのスケッチブックの1ページをびりり、と破る。
それをくしゃくしゃに丸めて捨てると、新しい真っ白な1ページをじっと見た。
「・・・・・なんか、どうしようもないな」
くそ、どうしてくれるのさ。思い浮かぶのは綺麗な空でも綺麗な木々でもなくて。
綺麗なブロンドの髪と、眩しいくらいの君の笑顔。
君との約束を果たすのは、どうやら遠い未来ではなさそうだ。
FIN
これって夜→美奈?それとも夜←美奈?(聞くな)
うーん、多分両想い前の夜→←美奈ってとこなんでしょうね。
夜天は自覚したら一直線タイプだと思うので、両想いになるのもそう遠くではないかも。
→Lesson3:音楽