もっとたくさん
サクラと小狼、モコナの三人(?)は買い物中。ファイはその間、一人食事の支度を
していた。
・・・・いや、一人ではなかった。
「もーぉ、黒りんも手伝ってよぉ。さっきから刀の手入ればっかり」
「仕方ねえだろ。たまにはしとかねえと錆びちまうんだよ」
「・・・刀ばかー」
「なんか言ったか」
「なんでもないでーす」
黒鋼の性格は知っていたし、手伝ってくれるとも思っていない。
でも、わざわざこんなことを聞いたのは、黒鋼に少しでもかまってほしいから。
刀に意識が向いたら、他のことなんて何も考えない人だから。
たまにはこうやって思い出させてあげないと、俺のこと忘れちゃうかもしれないでしょ?
「何笑ってんだ?」
「うひゃっ!」
急に後ろからひょっこりと顔を覗かせた黒鋼に驚いて、ファイは珍しく声を上げた。
「び、びっくりしたー。どしたの、黒たん」
「あのな・・・・てめえが手伝えっていったんだろうが」
「へ?」
ファイはきょとんとした顔をする。そしてむすっとした顔を見せる黒鋼を見た。
まさか、ちゃんと律儀に来てくれるなんて思わなかった。
今日は、雨でも降るかな。
「ありがと、黒りん」
くすくすとファイは笑った。すると、黒鋼はそっとファイの頬に手をやる。
ファイは顔を上げる。そしてふっと微笑むとそっと目を閉じた。
それが、合図。二人の唇はゆっくりと重なった。
「ん・・・・・・」
ファイは小さく声を漏らす。そして薄く目を開けると、整った顔をした男の姿が目に
入る。
(あ〜・・・・やっぱりカッコいいなぁ)
男の自分から見ても、カッコいいと思う。
・・・いや、正しくは自分だからこそ、そう思うのか。どちらにしろ、大好きな顔だから
いいか、とファイは少しだけ笑った。
「なに考えてんだ?」
「え・・・・んっ」
「こうしてるときくらい、俺のこと考えてな」
なに言ってるの。俺はいつだって考えてるよー、君のこと。
こうしてる時はもちろん、普段からだって。
「黒りんこそ・・・・いっぱい俺のこと考えてよ」
「考えてる」
「うっそだぁ」
クスクスと笑うと、また深く口付けられた。
「んんぅっ、はあっ・・・・」
深い口付けに、思わずファイは声を上げる。そして崩れ落ちそうになる体を支える
ように、黒鋼はファイの腰を抱いた。
「んはっ・・・ね、黒る、くるしっ・・・・」
ファイがいっても聞く耳を持たない、といった感じで、黒鋼はファイの唇を喰らう
ように口付けた。
だけど、苦しい反面心地よくて。ファイはぎゅっと黒鋼の背に手を回した。
黒鋼は背にその感触を感じると、ファイの服の中に手を入れて、そっと肌に触れた。
ファイはビクッと震えて目を見開いた。
「ちょ、ちょっとまっ・・・・」
「あ?」
「こ、ここでー・・・?」
「嫌だってのか」
「だってぇ・・・・小狼君たちいつ帰ってくるか分からないじゃない」
「・・・・・・」
明らかに不機嫌そうな顔を見せる黒鋼を見ると、なんだか少し面白くなった。
ファイはクスッと笑うと、黒鋼の首に手を回して抱きついた。
「だから・・・・ね?続きは、部屋で・・・・・ね?」
甘い、砂糖菓子のような囁き。
黒鋼は一度ぎゅっと抱きしめると、ひょいっとファイを抱き上げた。
「ひゅー、黒様力持ちv」
「お前が軽すぎるんだよ」
もう少し食え、と黒鋼はため息をつく。ファイはぷぷ、と笑うとそっと目を閉じた。
黒鋼はファイのしてほしいことをすぐに理解し、そっと触れるだけのキスをした。
「これだけー?」
「不満か?」
「うん、不満ー、とっても不満」
だからね、とファイは笑った。
「ベッドでいっぱいキスして?息が出来なくなるくらい・・・・・いーっぱい」
ファイがニコニコと笑うと、黒鋼は目を丸くした。そしてすぐに目を細め、ふっと
笑い、ファイに口付けた。
「んっ・・・・・」
「分かった。望みどおりにしてやるよ。だから後悔なんかすんじゃねえぞ」
「しませんよーだ」
・・・・そして晩御飯が遅れて
小狼たちがお腹をすかせて帰ってきて
モコナやサクラがどうして遅れたのー?と純粋に聞いてくるのは
もう少しだけ、先のお話。
FIN
はい、バカップルです。
黒ファイはバカップル上等ですから(笑)