鎖という名の魔法
「・・・・・ねえ、黒りん」
「あ?」
黒鋼の腕の中で丸くなっているファイが呟いた。
「黒みんは、俺のこと好き?」
「・・・・・・・」
「あはは、いいんだよぉ、答えなくて。答えもらえるなんて思ってないもん」
クスクスとおかしそうに笑いながら、黒鋼の服を握った。
「ただね、俺は、黒りんにとってなんなのかなあって思っただけ」
そういってむくっと起き上がり、黒鋼の体に跨いで覆いかぶさった。そしてクスッと
笑うと、黒鋼の唇にそっと指を這わせる。
「この唇は、いつも俺を狂わせる」
「この瞳は、いつも俺を貫いてる」
「この指は、いつも俺を夢中にさせる」
ファイはぽすん、と黒鋼の胸に頬を寄せるように擦り寄った。
「ねえ知ってる?俺はね、いつも君に夢中なんだよ」
「・・・・・何が言いたいんだよ」
黒鋼がファイの頭をくしゃりと撫でると、ファイはむくっと少し起き上がってにこっ
と笑った。
「分からない?」
「知るか」
「だったらいいんだ」
「・・・・わけわかんねえぞ」
「いいの」
ファイはまたぽすっと頬を寄せて寝転がった。すると、黒鋼はファイの体をぼすっと
ベッドに寝かせ、自分がその上に覆いかぶさり、唇に深くキスをした。
「ん・・・・・・・」
ファイはそっと目を閉じて、黒鋼の体に手を回した。そして唇を離すと、お互いが
お互いを見つめた。
「好き」
「・・・・・・・・」
「君が俺のこと好きじゃなくても」
「俺だけが君に夢中でも」
「俺は君という魔法にかかってしまったから」
「もう、離れることが出来ないよ」
ぎゅっと手を回して抱きつくと、黒鋼もそっとファイを抱きしめた。
まるで、守るように。
大切なものを守るように。
「・・・・・泣くな」
「泣いて・・・・ないよ」
「心が泣いてる」
「・・・・・」
ファイはぎゅっと背に手を回す。
ああ、どうして君は
俺の心が分かってしまうのかな
「俺はここにいるから」
「黒・・・・」
「ずっと傍にいる」
「・・・・・・」
「俺が死なない限りは、お前の傍にいるから」
一人でなんか、もう泣くな
「・・・・・・・うん・・・・・・・」
優しくしてなんて言わない
好きになってなんて言わない
ただ、もう一人は嫌だから
こうしたのは君なんだから
魔法をかけたのは君なんだから
どうか、この魔法を解かないで
FIN