体が熱い。
息が出来ない。
今、一体なにが起こっているのだろう。


「んっ・・・・はあ、んっ・・・・」
あれ・・・・・なに、この声・・・・
苦しくて、変に息が乱れる。
暑いってわけじゃなくて、寝苦しいってわけじゃなくて。
でも、なんなんだろう・・・・この気持ち。
妙に、気持ちがいいような・・・・そんな気持ち。






の夢





「・・・・・・いか」
「ん・・・・・」
いか?いかって、あの食べるイカ?
・・・・・・・って、なに渋谷みたいなこと考えてんの、僕。





「・・・・・・か、猊下」
「んぅ・・・・・・なに・・・・・・」
「なにじゃないですよ。起きてください」
「・・・・・ふぇ?」
うわ、眩しい。急に光が入ってきた。
薄目を開けてみると、カーテンが全開。そこから光が入ってきてるみたいだ。
そこにいるのは・・・・誰?光のせいで、よく見えない。
「起きました?猊下」
「・・・・・・ヨザック?」
「はい、グリエ・ヨザックですよ。目が覚めましたか?猊下」
子供にお日様をかかせると、大体はこの男と同じ色を使うんだよね。
ああ、その綺麗な髪が、光で光って本物のお日様みたいに光って見える。




「何でここにいるの?」
「酷いですねーぇ。朝が苦手な猊下のために、起こしに来たっていうのに」
「んぁ・・・・うん、ありがと。ごくろーさま」
「・・・・あの、思いっきり棒読みなんですけど。ホントに感謝してますぅ?」
「うん、してるしてる。えらいねー」
近くに寄ってきてるヨザックの頭を、いい子いい子と撫でる。ちょっとムスッとして拗ねたような顔をして
いるヨザックはまるで子犬みたいで、なんかおかしかった。




「さて、目も覚めたみたいだし、さっさと着替えてくださいねー」
「ん〜・・・・そうする」
ホントはまだちょっと眠たかったけど、まあこれ以上寝てたら他が色々うるさいだろうし。
僕はもたもたとパジャマのボタンに手をかけた。
でも、寝ぼけてるせいかな。なんかうまく外せなくて。
そしたらなんかため息をつく声が聞こえて、それを発したのがヨザックだって分かると、ちょっとムッとして
僕は顔を上げた。




するとヨザックは少し呆れたような顔で、しゃがみこんできた。
なんだよ。何か言いたいの?
僕がヨザックをちょっと睨んでいると、ヨザックが無骨な手を伸ばして、僕のパジャマに手をかける。
「ちょっ・・・・!?」
「あー、じっとしててくださいね、猊下」
「なにすんの!」
「なにって、ボタン外してあげてるんじゃないですか」
ヨザックはそう言いながら、ぷちぷちと僕のパジャマのボタンを外していく。
あっ・・・・あれ?何これ、何これ・・・・か、顔が熱いっ・・・・・・・って、ちょっと!!




「・・・・・はい、出来ました。じゃあ脱ぎましょうかねー・・・・・って、猊下?」
何これ・・・なんなんだ、これ!!










「・・・・・・・顔、真っ赤ですよ?」
「っ!!」
冗談じゃない!!










「うぉわっ!!」
ヨザックが変な声を出して、その後にどたーんって倒れる音が聞こえる。
それもそのはずだ。僕はヨザックのことを思いっきり突き飛ばしたんだから。
「な、なにすんですか、猊下!!」
「そ、それはこっちのセリフ!!子ども扱いすんな、馬鹿!!」
「はあ?お、俺は別に・・・・・・」
「いいから出てけ!!大賢者の着替えを覗く気!?」
「ちょっ・・・・・げ、猊下!?」
「出てけ――っ!!」
「わわわわっ!!」
僕は部屋の中にあるものを、あるだけヨザックに投げつける。
ヨザックが慌てた様子で部屋を出て行って、ドアがバタンッと閉まると、僕の投げた枕がドアに綺麗に
当たった。





「な・・・・・・・にこれ・・・・・」
変にドキドキする。え、何で?
たかだかあれくらいのことで・・・・・・・
でも・・・・・・・初めてヨザックのことを見下ろした。あんなに近くで。
オレンジ色の髪の毛から覗く彼の顔は、意外なほどに綺麗で、びっくりした。
そういえば・・・・この城にはかなりの美形が揃ってるから忘れてたけど、ヨザックだってかっこいい部類に
入るんだ。






「うわ・・・・・・・・・」
だからって、こんなに赤面する?
男のかっこいい表情を見たからって。
ボタンを外されたからって。
何でこんなに赤面しなきゃならないの。







「・・・・・・・変な夢、見たせいだ」
僕はポツリと呟いて、布団を握り締めた。






昨夜見た、熱くて息苦しくて、気持ちのいい夢。
誰かと・・・・・キスをする夢。
そんな夢を見たせいで、僕の熱はまだ冷めない。












欲求不満猊下・・・;