「や・・・・・めて、ああっ・・・・!!」
びくっと背が反り返る。
とてつもない快楽が、体中に湧き上がる。
「お・・・・ねが・・・・もうやめて・・・・・」
ぽろぽろと涙を流して、許しを請うけれど
僕の上にいる彼は、それを聞き入れてはくれない。
「まだだよ・・・・もっと可愛い顔を魅せて」
眩暈がするほどの、快楽。
涙が浮かび上がるほどの、嫌悪感。
だけど、拒むことは出来ない。
それが僕にかかった呪縛
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呪縛 〜黒き影〜
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天気がよくて、風が気持ちよくて。顔を上げたら、綺麗な青空が広がっていて。
ピクニックに来て正解だったな、と思った。眩しさに瞬きをして、そう思ったけど。
贅沢を言うならば、後一人・・・・あいつも一緒にこれたらな、と思った。
「むーらたっ」
ポンッと背中を叩かれる。振り返ると、中学からの友人の渋谷が娘であるグレタの手をひいて
笑ってた。
「猊下。これね、ユーリと一緒に作ったの」
はい、と花冠を僕の頭に乗せてくれた。
「ありがとう。うん、綺麗だね」
「ふふ。猊下のほうがきれーよ。お姫様みたい」
「それはそれは。でも、グレタが一番可愛いよ」
くすっと笑って頬にキスをしてあげると、グレタは嬉しそうにきゃーと声を上げた。
「こらこら、村田。親の前で娘を誘惑すんなよ」
「えー、いいじゃん。ねー、グレタ」
「ねー、猊下」
「やれやれ・・・・」
渋谷は呆れたような顔をして、芝生の上に座った。そして手元に咲いている花をぷちんと積む
と、その花を編み始めた。
「渋谷も花冠?」
「うん。さっきグレタの分作ったから、これは・・・・」
「麗しの婚約者様の分?」
「う、うるさいな」
図星か。ほんとに分かりやすいんだから。
「明日だな。帰ってくるの」
「・・・・・・・うん」
僕もグレタと一緒に渋谷の隣に座って、花を弄る。
1ヶ月ほど前。ヨザックとフォンビーレフェルト卿は、部下を引き連れて視察へ行った。
結構長いものになると、出かける前に告げられた。特に危険はないから心配要らないとも言われ
たが、渋谷は婚約者が自分の手から離れるのが本当に心配でしょうがなかったみたい。
ま、かと言う僕だってそうなんだけど。ヨザックの長期任務なんて今まで何度もあったのに。
今回の任務より危険なことだってあったのに。やっぱり慣れないな。
僕が心配そうな顔をしていると、ヨザックはすぐに帰ってきますよ、なんて言って笑って、頬に
キスをした。その直後、ちゃっかり首に痕を残していったけど。一ヶ月たった今、もうその痕な
んか消えちゃってる。
早く・・・・・帰ってきて欲しいな。
そして、早く僕が君のものだって言う証をいっぱいつけて欲しいな。そして・・・・・
「・・・・・・ねえ、渋谷」
「んー?」
膝に頭を乗せて眠るグレタを撫でながら、渋谷は曖昧に返事をした。
「君とフォンビーレフェルト卿ってさぁ」
「うん?」
「やること、やった?」
「・・・・・・は?」
渋谷は目を点にする。
「だからぁ、セッ・・・・」
「わーわーっ!!」
渋谷は僕の言葉を遮るように大声を上げた。
「な、ななな、なんってこと言うんだ!しかも娘の前で!!」
「まだ言ってないし、グレタは寝てるんだからいいじゃん。って言うか君のその声で起きちゃうよ」
間近で聞いちゃったから耳が痛い。きーんってするよ。
「で?僕の質問の答えは?」
「っ・・・・な、何で急にそんなこと」
「だってさぁ」
「・・・う・・・・うん」
「僕たち、まだなんだもん」
「・・・・・・はいぃ?」
また目を点にする。
「だから、まだなの。ヨザックとえっちとかそー言うの」
「そ、そそ、そーなの!?だってお前たちって・・・・結構長くないか!?」
「うん。えっと、ひーふー・・・・・2年かな」
「その間、ヨザック手を出してこないのか?」
「うん。触ってくることはあるけど、本番はないよ。それに触るって言ったってちょこっと肌を
触るくらいだし。キスもしてくれてキスマークとか残すことは残すんだけど、それ以上は何でか
しようとしないんだよねぇ」
「へ・・・・へぇ」
あ、渋谷の顔真っ赤だ。自分で聞いててれちゃってるよ。
「で?渋谷はやった?」
「そ、そういう風に言うな・・・・・まあ、したけど」
「ほんと?で、どっち?」
「は?」
「だからぁ、渋谷は上?それとも下?ねえどっち?」
今度はぼんって音がなるくらい勢いよく真っ赤になった。おお、茹で蛸状態ってこういう状態の
ことを言うんだ。
「ねえ」
「うっ・・・・上・・・・だけど」
ぼしょぼしょと消えちゃうくらい小さな声。でもはっきりと聞こえたよ。
「そっかぁ、やっぱりかぁ。まあ、それが自然だよねぇ」
「な、何でそんなこと聞くんだよ」
「ん?ああ、参考にしようかなぁって思って。するとき痛いのってやだし」
「ソ・・・・・ソウデスカ」
かちこちの言葉に体。ぷぷ、ロボットみたい。
「まあでも・・・・」
「え?」
「ヨザックとなら、痛くてもいいかな」
「・・・え」
「やっぱり痛くても、ちゃんとしたいな」
どんなに痛くても、するのはヨザックとがいい。
だって好きだって思うのはヨザックだけだしね。
愛してる人と、幸せになりたいじゃん。
「・・・・村田ってさぁ」
「ん?」
「サラッとすごいこと言うよな」
「何それ」
クスクスと笑うと、渋谷もちょっと笑った。少しは体の硬さも取れたみたい。
僕たちがクスクス笑いあってると、グレタが目を覚ました。目を擦りながら起きる姿はとっても
可愛い。僕達はグレタの頭を撫でながら、楽しく笑った。
ヨザックがいたらいいのに。
またそう思った。
そうだ。ヨザックが帰ってきたら、フォンヴォルテール卿からヨザックの休みもぎ取って、
ここにつれてこよう。
ヨザックの髪と瞳の色と同じ色がよく見えるここに、一緒に来よう。
そう思うと、なんだか楽しみになってきた。
だけど
「ユーリ」
「え?」
後ろから声が聞こえて振り向く。
そして背後にいる人物を見て、僕たちは驚いて目を見開いた。
「サラ!?」
彼との再会。
それは、僕たちの運命を大きく変えるものとなった。