ギャラクシアとの戦いが終わり、星野たちが星に帰って1ヶ月。
地球ではしばらくスリーライツ解散と失踪というニュースで賑わっていた。
これは、そんな騒ぎが大分収まってきた時のお話。
唄を聴かせて 1
世間では、新しいアイドルグループが誕生していた。
スリーライツのことが忘れ去られたように、女の子たちはそのアイドルに夢中になっていた。
しかし、うさぎたちはそのアイドルグループに全く興味がなかった。
アイドル大好きの美奈子でさえ、夢中にならなかったのだ。
「なんかさぁ〜・・・・スリーライツを見慣れちゃったから、目が肥えちゃったって感じしない?」
「言えてるわね・・・・どこがいいのかさっぱり分かんない」
いつものように火川神社で会っている時、ポツリと呟いた美奈子の言葉にレイは同意した。
そして、全員同時にはあ〜と大きくため息をつく。
「星夜たち・・・・元気にしてるかなぁ・・・・」
うさぎが空を見ながら小さく呟く。美奈子達はハッとうさぎを見る。うさぎは小さくため息をつくと、
ぱんぱんとスカートをはたきながら立ち上がった。
「ごめん、今日は帰るね。ばいばいっ」
にこっと笑い、ひらひらと手を振って階段を下りていった。そんなうさぎの背中を4人は見つめた。
「うさぎ・・・・・この頃変よね」
「うん・・・・衛さんが戻っちゃったからって訳じゃなさそうよね」
「・・・・やっぱり・・・・うさぎちゃん・・・・・」
亜美が小さく呟いたのを最後に、4人は黙り込んでしまった。
それは、信じられないことで、信じたくないこと。
だけど、止めることなど出来ないことだから。
3
「・・・・・はぁ・・・・」
小さく息を吐くと、白い息がふわりと広がる。顔を上げると、その先には一ノ橋公園が見えた。
うさぎは公園に目をやると、たたっと走って公園に入った。
しばらく来なかった公園。うさぎは誰もいない公園を見渡して、ブランコにゆっくりと座った。
きぃ、きぃと小さな音が鳴る。ぎゅっと冷たい金具を握り、俯く。
「なんか・・・・最近変だなぁ・・・・」
小さく呟いて、またきぃきぃ、と音を鳴らす。そしてすい、と空を見上げる。
綺麗な星々が広がり、その中心にある月。その時ふっと、一人の人が思い浮かんだ。
それは、大切な自分の仲間でも、大好きな恋人の衛でもなかった。
1ヶ月前、この地球を去っていった星野の姿だった。
『おだんご』
「っ・・・!」
ハッと我に帰って俯く。
今、自分は何を考えた?
月を見て、誰を想ったの?
「やだ・・・・何考えてんだろ」
首をぷるぷると横に振る。その時、自分の瞳からぽたりと熱いものが零れ落ちた。
「何・・・・これ」
指でそれを拭う。そして、それが涙だと気づいて、うさぎは慌てて腕で擦り始めた。
しかし、何度擦っても止まってくれない。それどころか、ますます流れてきた。
「ふっ・・・・・」
止まらない涙を流して、うさぎは体を倒して膝に顔を埋めた。
どうして、どうして、どうして。
誰よりも会いたいと思うの?
まもちゃんより、だれより
星夜に会いたいって、思うの?
「ふえっ・・・・ぅっ・・・・・」
体を起こして、再び涙を拭う。そして、広がる星空をもう一度見上げた。
そして鞄の中から一枚のCDを取り出す。スリーライツのCDだ。
ジャケットの中で星野、夜天、大気の3人がいる。
その中で、中心に映っているのが星野だ。
どこか、遠くを見つめているような瞳。この先には、きっと星野たちのプリンセスがいるのだろう。
うさぎはCDプレイヤーにCDを入れて、そっとイヤホンを耳に当てた。
いつの間にか、毎日のようにこの歌を聴いていた。
〜僕の声よ 届け
今どこにいるの 僕のプリンセス 答えて〜
星野のソロパート。
星野のプリンセスに対する気持ちを聞いてから、ずっとこのフレーズが頭から離れなかった。
ずっとずっと、呼びかけてたプリンセス。
やっと見つかったんだよね。よかった・・・・
そう思ってたのに。
「どうしてっ・・・・・」
こんなにも悲しくなるんだろう。
切ない歌詞、切ない歌声。
今はこんなに悲しくて仕方がない。
どうして・・・?
ぎゅっとケースを握り締めた。
その間も、曲は流れ、歌は進んでいく。
その時、耳を塞いでいたイヤホンがスッと外された。
「えっ・・・?」
驚いて顔を上げる。そして振り向こうとしたが、ぎゅっと肩を掴まれてそれを防がれた。
「え・・・・ええっ?何・・・・・」
身動きが取れなくなって、うさぎは慌てる。しかしその時、耳にあの歌声が広がった。
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